迷う




曇った気持ちを引き摺りそうな時は、歩く。

どこに行こうかとか、何を買おうかとか、
誰に会おうかとか、なんにも考えない。

街並や風景や建物や草木に
感傷を抱くとか愛でるとか
そんな心持ちにはあらず
ただひたすらに歩くだけ。

自分の場所や方向が分からなくなるのは怖い。
暫くはそれなりの慎重さを以て歩くだろう。

初めて通る路地裏の狭い道、
通り過ぎるだけだった場所。
視覚に映えるものごと。
記憶を喚起させる匂い。
体が傾いだ方角。
風の奔る道。

歩きたい場所だけを歩くようになる。
歩く方向は自然な選択に委ねられる。
歩く事が純粋な行為となる。

そして、迷う。
それでも歩く。

歩く。

ふと
立ち止まる。

再び
歩き始める。

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