12月半ばの雑記



返還前のマカオには口笛が良く似合う砂漠地帯が用意されていた。
其処で何故か男の友情と信念を掛けた壮絶な銃撃戦に
巻き込まれてしまった私は、弾丸の網の目をスローテンポでかいくぐり、
舞台袖近くの書き割りの隙間を這い進み、下手側に抜け、
その場をかろうじて脱出、用意された船に乗って行き着いた先は、
なんとはなしにサンパウロを想起させる都会のジャングル。
錯綜する交差点で足を一歩踏み出す為の努力を
放棄し座り込んでしまった私は、突然視界を白い闇に覆われ、
自分の存在の不確かさを認識し自己嫌悪に陥るのに必要なだけの、
永遠とも思われるひと時の後、その場から一歩も動けない事に気付いた。
私の佇んでいた交差点を起点とした”白い闇”症状の拡がりから、
感染源のサンプルとして28時間の後、何処とも知れぬ場所に収監され、
同じ症状の”検体”達との集団生活が始まる。時間の感覚が麻痺し、
閉鎖された空間に於ける集団生活の規約や同調が綻び始めた或る日
突然色が舞い戻り、私達は収容所の門が最初から開かれていた事を知り、
各々帰るべき場所を定めて歩みだした。

生還の喜びを実感する暇もなく、以前から作業を進めていた”らしい”
名も知れぬ大学の卒業制作を手伝う羽目に陥り、
いつの間にか”リビング・デッド”なる現象を撮影する状況に置かれ、
周囲が死に魅入られてゆく中、からくも生き残り自宅に戻る事が出来た。

ネットワークから断絶された環境に晒され続けた私は
貪るようにネット上に垂れ流されている情報の海にダイブした。
然し乍ら、手始めにと手をつけたRSSフィードの
未読分の消化でさえ侭ならず、強迫観念からか、
24時間の経過を経てもPCの前から離れる事が出来なくなり、
どれだけの時間この過剰な情報に晒される事で満たされるのか
皆目見当も付かなかったのである。あ、これは映画じゃないな。

翌日、YouTube等の動画サイトに撮影した映像が挙げられていたので、
関連動画をまたもや丸一日掛けて閲覧する事となる。
気付いたら二日間に渡って寝食を忘れモニタの世界を浮遊しており、
ブドウ糖溶液に香料が微かに加えられた飲料水しか口にしておらず、
次の24時間の篭城の為の食料を調達する為に、いざコンビニへ。
そう勢い込んですっくと立ち上がり掛けたところ、体の芯が揺らぎ、
ひゅらりと目の前に光明が差したかのような目眩を覚え気を失い、
果てしなく潰える事の無い厭世観を以て目覚める事となる。

”荒野を目指して”北の大地を目指す事を思いつき、
路上観察学会の本とスケッチ・ブックと、
沢木耕太郎の「旅する力」を鞄に収め、
常磐線を北上する計画を立てるも翌日仕事がある事を思い出し、
珈琲を飲み乍らラングドシャーとホワイトチョコのハーモニーを堪能し、
軽い喪失感と満腹感を得る事で旅立ちへの渇望をうやむやにする。


詰まるところ、敢えて書くべき事も見当たらず、
其れでも尚、無理矢理文章を書きなぐりたい気分に陥る、
でも映画と本はたくさん観て読めた。そんな12月の半ば。

■ 一昨日かな、仕事中に流れていたJ-WAVEにて、
 ”ジョアン・ジルベルト来日公演中止”の報。
 もう何と云いますか、モチベーションの減退たるや..。
 取り敢えず今は養生に専念してほしい。そして、
 来日の機会がまた来る事を信じて待ちたいと思います。

■ 何故に自分の名前が挙っているのか。
 しかも全てでは無いにせよ、本当に関連のある情報も
 含まれている訳で、多少なりともなんだかんだと痕跡が
 残ってしまうネットの恐ろしさたるやなんとしたことか。

コメント

  1. 今年もお世話になりました。
    そうですね、やはりというかジョアンは予想していたとはいえ、ほんとにガッカリしました。
    来年も宜しくお願いします。

    返信削除
  2. こちらこそ、何度もコメント頂けて嬉しかったです。
    基本的にコメントしずらいブログですから。。
    ジョアンは本当に残念でしたが、
    また来てくれる事を期待して待つ事にします。
    来年も宜しくお願いします!

    返信削除

コメントを投稿