思う事
日々思う事、考える事、学ぶ事。 本音を云うと、本当にやりたい事だけを考えてゆきたい。 でも、出来ないから、余った時間をやりくりしてきた。 その状況はしばらく変らないだろうけれども、 自分のものづくりに直結した知識を得られる場所に来れた。 本当にやりたい事にすこし近づいたかな、とは思う。 ひん曲がった道程を望んで旅程を組んできたような気がしてきたのです。 体の重心が歪な出来物によって微妙に歪んでいるから真っすぐに歩けません。 にわかに駆け出そうものなら、 地面を踏みしめんとする、その足裏に寄生している、 幾年月を経た想いが、地面から離れるのを拒絶して たちまちのうちにつんのめってしまうのでしょう。 そのまま倒れる事が出来れば、あとは意識を喪失する準備をするだけですが、 勿論そう上手く事が運ぶ訳は無いのでありまして、 重力に委ねられた我が身は、 横から何者かの手によって 掬われ絡めとられ衣を付けられ香ばしく揚げられてしまいます。 揚げられているときは己が身の食欲をそそる香しき芳香に、 身を捻ねちぎらんばかりの歓喜を得、 そしてその喜びを交歓する事に使命感をさえ抱くのでありますが、 その喜ばしきひとときは、そう長くは続かないのであります。 揚げ過ぎはよくありませんから、 良い頃合で皿に盛られてしまうのであります。 皿に盛られてからは、この状況について思案する事となりますが、 その思索の過程に於けまして、何が正しいのか、或は正しい事とは何なのか、 大体に於いて二律背反する性質を自分に与える事はどうなのか、 その是非を考える事自体どうなんだろうか、まあなんだ、 現在の状況は心地よいではないか、この何処に問題があるのだ、 問題なんて無いじゃないか、 このままで良いじゃないか。 ええじゃないかそうじゃないかこうじゃないかほうじゃないか。 しかしこのように思索が行き過ぐると、 衣に閉じ込められている我が身から、なにか、 美味しさのエキス、汁、成分が抜け出てしまい、 麗しき晩餐の宴には相応しからぬ 平凡な事物に成り下がってしまうのであります。 すると、時間を経たキャベツの千切りのように弛緩した某かと一緒に、 菜箸の刺戟と地盤変動によって、退場を命ぜられてしまうのであります。 衣に拘束され、穴だらけの私は、行く当ても無く、 茫漠の道程を、目的も定めず、ただひとつ、 己が身に纏いし香ばし...